ブログ
発達障害の子どもの就学先は? 特別支援学級について知ろう
2018/06/15
お子さんの発達が気になる場合、就学先に悩む保護者の方も多いことでしょう。特別支援学級や通常学級など、就学先によって異なる教育環境やメリット・デメリットを知って、我が子にとって一番いい選択をしたいものです。この記事では、発達障害のある子どもの就学先について考えを深め、特別支援学級における指導や支援の内容について見ていきましょう。
- 発達障害の特別支援学級について
- 特別支援学級の支援、指導について
- 就学先の決め方について
- 発達障害の就学と特別支援学級に関するよくある質問
この記事を読むことで、特別支援学級の支援や指導について理解できるでしょう。ぜひ参考にしてください。
1.発達障害の特別支援学級について
文部科学省では発達障害のある子どもを支援するために、特別支援教育に力を入れています。どのような就学先があるか見ていきましょう。
1-1.就学先の種類
発達障害やそのほかの障害のある子どもの就学先は、大きく分けて小学校と特別支援学校があります。「特別支援学校」は、視覚・聴覚・知的障害と、肢体不自由や病弱の子どもに教育を行う学校です。一方、小学校には「通常学級」に加え、「特別支援学級」として小人数制で一人ひとりにきめ細かい教育を行うクラスと、通常学級に在籍しながら状況に応じて支援教室に通える「通級学級」が設置されています。
1-2.特別支援学級とは
特別支援学級は、障害の種別ごとにクラスが設けられており、1クラス8人の定員制です。知的障害、自閉症・情緒障害、肢体不自由、難聴、弱視、病弱・身体虚弱の7種類の学級があります。特徴としては、少人数制で一人ひとりの特性に応じてきめ細かい指導ができることです。
特別支援学級は年々増加の傾向にあり、過去15年間で約2倍に増えました。平成27年には小学校で37,324学級、中学校で17,262学級が設置されています。この中の約4割が自閉症・情緒障害のクラスです。
参考:文部科学省 特別支援教育について 特別支援学級数の推移
対象者は以下のように定められています。
- 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの
- 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの
また、通級による指導が受けられるのは、
- 自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
- 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
とされています。
就学相談では、この基準をもとに話し合いや検査が行われ、医師の診断や保護者の意見をくみ取りながら、就学先を決定します。
2.特別支援学級の支援、指導について
発達障害のある子どもに向けて、特別支援学級ではどのような支援・指導をしているのか、詳しく見ていきましょう。
2-1.どんな支援、指導が受けられるか
2-1-1.「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」
まずは、一人ひとりの発達障害の特性に合わせて「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」が立てられます。「個別の指導計画」は、教育的ニーズに対する指導目標や指導内容を盛り込んだものです。学期や学年ごとに作成され、これをもとに指導が行われます。「個別の教育支援計画」は、乳幼児期から卒業後まで長期視点で立てられる計画です。医療・福祉・教育など関係機関との連携や進級・進学にも一貫して引き継がれます。
2-1-2.学習レベルの配慮
授業では、必要に応じて各教科の指導目標や内容を下学年のものに替えたり、特別支援学校の教科書を使用したりするなどの対応が可能です。指導にはプリントや手づくりの教材を用いるなど、一人ひとりの理解や特性に合わせたきめ細かい内容になっています。
2-1-3.生きる力を育てる指導
自閉症・情緒障害の支援学級では、教科学習以外の指導も重要です。個々の特性や能力を生かすことができるよう配慮され、対人関係のスキルや適切に自己を表現する方法を学びます。指導内容としては、健康で安全な生活習慣の形成や、環境への適応と情緒の安定、コミュニケーション能力やソーシャルスキルの育成などです。
2-2.教育環境について
教室内は安全面に配慮し、集中して学習できるよう環境を整えています。よく行われるのは、気が散りやすい子がいる場合、掲示物を極力減らすなどの工夫です。
授業は8人の生徒に対して担任が1人つき、目の行き届いた指導が行われます。一方、ホームルームや給食・昼休みは通常学級に通い、通常学級の子どもと一緒に過ごすこともできるのです。このように障害のある子もない子もともに学べる環境づくりは学習指導要領にも示されています。これは「インクルーシブ教育」といい、文部科学省で取り組んでいるものです。
2-3.特別支援学級のメリットデメリット
【メリット】
- 少人数クラスで行き届いた指導が受けられる
- 能力や特性に合わせてカリキュラムを組んでもらえる
- 人と比べることなく本人のペースで学習できる
【デメリット】
- すべての小中学校に設置されているわけではないため、場合によっては遠くの学校へ通学しなければならない
- 受け入れ可能人数に制限があり、地域差が大きい
- 通常学級との行き来がストレスにつながることもある
3.就学先の決め方について
我が子に合う就学先はどのように決めたらいいのでしょうか? 押さえておきたいポイントを見てみましょう。
3-1.通常学級か特別支援学級か
3-1-1.通常学級に通うメリットとデメリット
前述の「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」は、通常学級に通うことになっても作ってもらうことができます。特別支援学級のような手厚い個別対応は難しくなりますが、通級指導の利用や支援員の派遣により、個々のニーズを満たすことが可能です。100%通常学級だけで過ごすのか、通常学級に在籍して通級学級を利用するかによって、計画の内容が変わるため、慎重に検討しましょう。
【メリット】
- 学習面での遅れがないこと
- 通常学級の子とコミュニケーションをとる機会が多いため刺激になる
- 通級学級を使うことで特性に対応できる
【デメリット】
- 個別での対応に限界がある
- 学習についていけなくなったときにフォローが必要
- 通常学級での刺激がストレスになることもある
- クラスメイトに特性をどのように伝えるかも悩む
3-2.向き不向き、決め方のポイントなど
3-2-1.通常学級が合うタイプ
通常学級が向いているのは、友だちが多く、結果はどうあれ授業や課題に一生懸命取り組めるタイプです。グループ活動や団体行動に問題なく参加できる子の場合、たとえ学力が低くても通常学級のほうが総合的にはメリットが大きいでしょう。このタイプの子は、人から「自分たちとは違う子」だと思われるのをとてもつらく感じるため、特別支援学級ではやる気や自信を失ってしまう可能性があります。
3-2-2.特別支援学級が合うタイプ
適切なコミュニケーションの仕方が分からない、孤立やトラブルを起こしがちというタイプの子は、たとえ知的レベルが高くても通常学級では能力を開花させるのは難しいでしょう。ストレスの多い通常学級より、適切な環境で感情のコントロールや自己表現の方法を学ぶほうが有効です。小学校だけでなく、中学・高校など、将来のことも考えて、適切な指導が受けられる場所を選ぶのがポイントといえます。
3-3.注意点
通常学級がいいか特別支援学級がいいかは、お子さんの特質や発達によって変わります。これは、どちらが「いい」「悪い」というものではなく、「合う」「合わない」の問題ともいえるでしょう。子どもにとって一番いい場所を選ぶためには、疑問に思うことは主治医や学校に何でも相談し、実際に特別支援学級を見学するなどして、納得できる決断をしましょう。
4.発達障害の就学と特別支援学級に関するよくある質問
発達障害のある子の就学や特別支援学級についてよくある質問をまとめました。
Q.特別支援学級に入るにはどうしたらいいですか?
A.まずは教育委員会による就学相談を受けましょう。面談を経て就学相談委員会からお子さんにとって適した就学先が提示されます。この決定に保護者が同意すれば決定です。最終的には保護者の意向が尊重されるため、家族や主治医とも相談しながら慎重に決めましょう。
Q.通常学級から特別支援学級への転籍はできますか?
A.はい。保護者の申し出により実態を把握し、特別支援学級での支援が必要であるとされた場合は、個別の支援計画が作成されます。まずは担任の先生に相談してみましょう。
Q.私立の小・中学校にも特別支援学級はありますか?
A.はい。文部科学省が発表した平成19年度の資料によると、自閉症・情緒障害の特別支援学級は、小学校に18学級、中学校には9学級あります。
Q.特別支援学級ではどのような教科書を使うのでしょう?
A.特別支援学校用の教科書や通常学級で使っている教科書です。下学年の教科書を選ぶこともできます。どの教科書を使うかは、個別の教育計画に基づいて選ぶことが可能です。
Q.通常学級に入りたい場合、就学までにどのようなことができているといいでしょうか?
A.一つの目安としては、保護者がついていなくても45分間着席していられることが望ましいといえます。また、順番を待つ、指示どおりに活動する、お手伝いの習慣などが身についていれば、小学校生活がよりスムーズになるでしょう。
まとめ
子どもの就学先は、将来にかかわることだけに、決断にはプレッシャーを感じる保護者の方も多いことでしょう。確かに大きな決断ですが、一度決めたら途中で方向転換ができないわけではありません。注意深く子どもの成長を見守り、状況に応じて選択を変えてもいいことを覚えておきましょう。