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広汎性発達障害の特徴は? 診断や関わり方で知っておくべきポイント

2017/06/27

発達障害の特徴と正しい対応方法

広汎性発達障害とは、自閉症・アスペルガー症候群など、コミュニケーションに関連する領域に見られる発達障害の総称です。発達障害は大きく3つの区分に分けられており、広汎性発達障害の他には注意欠陥性多動症候群(ADHD)や学習障害(LD)があります。近年、発達障害に対する理解が進んだことで早期の段階で適切な療育を受けられるようになりましたが、その反面、「自分の子どもが発達障害ではないか?」という不安を抱く方も増えてきました。

そこで、この記事では、広汎性発達障害の特徴や診断方法について考えていきたいと思います。

  1. 広汎性発達障害の基礎知識
  2. 広汎性発達障害の特徴について
  3. 広汎性発達障害の診断について
  4. 広汎性発達障害の子どもとの関わり方について

1.広汎性発達障害の基礎知識

はじめに、広汎性発達障害の定義について見ていきましょう。

1-1.広汎性発達障害とは?

広汎性発達障害とは、社会性や対人関係・コミュニケーション能力などにまつわる発達障害のことです。精神病や精神障害の分類マニュアルであるICD-10(世界保健機構作成)で使われている分類の一つで、自閉症やアスペルガー症候群・レット症候群・小児期崩壊性障害などが含まれています。それぞれの特徴を持ちながらそれらの基準を満たさない場合には「特定不能の広汎性発達障害」と診断され、全体の47%と半数近くを占めています。

米国精神医学会製作の分類マニュアルであるDSM-Ⅴでは「自閉症スペクトラム」と呼ばれており、同じ障害でも診断をする医師が使う分類マニュアルによって、診断名が異なります。ただし、レット症候群については、X染色体上の遺伝子が原因であることがわかっており、自閉症との関連がないために自閉症スペクトラム障害には含まれていません。 

1-2.広汎性発達障害の原因

前述のレット症候群を除く広汎性発達障害については、原因が解明されていません。遺伝的要因と環境要因が複雑に影響し合って現れるという説が主流となっていますが、研究によって数値はバラバラで、確証は得られていないというのが現状です。かつて言われていた、親のしつけや愛情不足といった子育ての仕方が原因であるという説については、医学的に否定されています。

1-3.最近の傾向など

2000年代頃から発達障害に対する注目が高まり、それに伴って世間の理解も進んできました。現在では早期に適切な療育ができる場も増えてきており、相談窓口も充実しています。

その一方、発達障害に対する認知が高まったことで、大人になってから自分が発達障害であったことに気がつくという方も少なくありません。広汎性発達障害についての情報がインターネットや書籍に氾濫し、「自分の子どもはどうだろう?」と不安に思う方も増えています。

2.広汎性発達障害の特徴について

この項では、広汎性発達障害の子どもに現れやすい特徴について見ていきます。人によって現れ方は異なるので、あくまでも一例として考えてください。

2-1.現れやすい特徴は? 

広汎性発達障害の子どもに現れやすい特徴は主に以下の4つに分類されます。

2-1-1.孤立型

  • 周囲に対しての興味が限定されている
  • 視線を合わせようとしない
  • 呼んでも反応が乏しい

2-1-2.受動型

  • 自分から他人に関わろうとはしないが他人からの関わりは受け入れられる
  • 人に言われたことに何でも従ってしまう
  • 嫌なことも受け入れてしまいパニックを起こしてしまう

2-1-3.積極奇異型

  • 積極的に他人と関わろうとするが一方的な印象を与えてしまう
  • 相手との距離感が必要以上に近い
  • 場の空気や相手の状況に合わせた対応が苦手

2-1-4.尊大型

  • 自分の意思や主張を一方的に押し付けてしまう
  • 周囲に対して強圧的な態度をとってしまう

この他、こだわりが強く一度決めた予定を変更できない・初めての場所が苦手ということも少なくありません。そのため、わがままな子どもという印象を周囲に与えてしまうこともあります。

2-2.感覚の過敏さ鈍感さ

人には、味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚があります。広汎性発達障害の子どもの中には、こうした感覚が過敏であったり鈍感であったりすることも少なくありません。 

感覚が過敏な場合の例でいえば、味覚が過敏で特定のものしか食べることができない、聴覚や視覚が過敏で大きな音やチカチカした映像が苦手などです。反対に、感覚が鈍感な場合には、嗅覚が鈍感で匂いがわからない、触覚が鈍感で熱さや痛みに気づきにくいといったことがあります。

2-3.成長と共に悩みを抱えることも

広汎性発達障害の症状は小さい頃は、さほど目立たないこともあります。また、小さいうちは、失敗をしても「小さいからしょうがない」と許されることが多いでしょう。しかし、成長するにしたがって、やりとりの難しさが目立つようになり、対人関係に関する悩みを抱えることも少なくありません。

3.広汎性発達障害の診断について

この項では、広汎性発達障害の診断について見ていきます。 

3-1.診断が可能な時期は?

広汎性発達障害は、人によって診断される時期が異なります。乳幼児期に発達障害が疑われる場合もあれば、保育園や幼稚園での集団生活が始まってから特徴的な行動に気づくということもあるでしょう。地域の3歳児検診で指摘を受けたり、園から相談機関を紹介されたりということもあります。

3-2.広汎性発達障害の診断ができる機関は?

広汎性発達障害の診断は専門医でないと行うことができず、診断ができる病院も限られています。発達障害情報・支援センターのホームページでも各自治体の発達障害者支援センターの情報が掲載されていますので、確認してみてください。かかりつけの小児科がある場合は、小児科医に病院を紹介してもらえる場合もあります。

3-3.セルフチェックについて

現在は、インターネットを検索すれば広汎性発達障害のチェックリストなどが簡単に見つかります。また、育児書の中にも広汎性発達障害のチェックリストなどが載っているものがあるでしょう。しかし、前述したように広汎性発達障害の症状は人によって現れ方が異なるため、簡単なチェックリストでは判断できません。チェックリストや症状の一例だけを照らし合わせて「うちの子は大丈夫」「うちの子は広汎性発達障害に違いない」と決めつけるのはやめましょう。

4.広汎性発達障害の子どもとの関わり方 

この項では、広汎性発達障害の子どもとのコミュニケーションの取り方について見ていきましょう。

4-1.特性を理解してあげることが大切

一口に広汎性発達障害といっても特徴の現れ方は人それぞれです。大切なことは、周囲が特性を理解し、適切なサポートを行っていくということです。発達障害と一括りにするのではなく、一人一人に適した環境を作り、対応方法を工夫していくことで、生活上の困難を解消することにつながります。

4-2.伝え方を工夫する

広汎性発達障害の子どもは、言葉で伝えるより絵で伝えた方が理解しやすいという場合もあります。そのため、絵カードなどを用いれば、意思疎通がスムーズにいくこともあるでしょう。

また、先のことがわからないと不安になる子もいます。そのような場合は、事前に予定を告げるなどしましょう。たとえば、「遊びの時間は時計の針がこの数字を指したら終わり」と伝えるといいですね。 

親が感情的になると、ますます子どもはパニックになります。子どもが混乱しているときは別のものに注意を向けさせる工夫をしましょう。

4-3.相談できるところを確保しておく

発達障害情報・支援センターのホームページなどを参考に、相談できる場所を確保しておくことも大切です。何か困ったとき、どこに相談すればいいかを知っておくことで、より安心して生活できるようになります。

まとめ

いかがでしたか? 今回は広汎性発達障害の特徴や診断方法・接し方などについて考えてきました。現在は広汎性発達障害との接し方や療育方法に関する本もたくさん出版されていますので、昔よりは知識を得やすくなっているでしょう。しかし、本やインターネットから得た知識がそのまま使えるとは限りません。自分で判断するのではなく、専門の方に相談することが大切です。保健師などが相談に乗ってくれる自治体もありますし、サポートを行っているNPO法人や社会福祉法人も増えています。まずは、こうしたところに相談するのも一つでしょう。